父の話

珈琲を淹れるのはいつも父でした。

やかんにお湯を沸かしている間に冷凍庫から豆を取り出し、
コーヒーカップを用意して
沸騰したお湯でカップやソーサーを温めて
少しだけ冷めたお湯で注ぐと
ぶわっと膨らんで、部屋中に珈琲の香りが広がります。

「今日はうまい!」と言って人数分のカップに注いでくれる。
父の淹れる珈琲は本当においしいです。

「おいしくしようとか我が入るとだめなんだ。時間に追われてもだめ。
ゆったりとした気分で淹れないと。まあそれが難しいんだけどな。」
そんな父のお気に入りの豆は南千住にある「カフェ・バッハ」のコーヒー。コーヒーももちろんですが、この雰囲気が好きなんだと
コロナになる前まではほぼ毎週通うほど大好きな場所です。

元々は父のすぐ上のお兄さんの紹介から。

なかなか場所を教えてもらえずお兄さんから買って送ってもらっていましたが、
あるとき割高で買っていたことが判明。
「身内でもうけなきゃどこでもうけるんだよ。」がお兄さんの言い分。

この父にして叔父ありのエピソードです。


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父の49日が終わって
帰りにバッハに寄りました。

奥さまがお出迎え下さって色々とお話くださいました。

「お父さん、3つの飲み方をされていたんですよ。
いつもの、おまかせ、そしてこれ。」
と右手でコーヒーポットからサーバーにお湯をちょんちょんちょんっと3回淹れる仕草。

「いつもの」は「バッハブレンド」

「おまかせ」は何か他に頼んだ時に合うコーヒー。
スタッフの方が選んでくださいます。

そして最後の3回淹れる仕草は「カフェ・シュバルツァー」
イタリアの豆を一滴ずつ抽出する高濃度のコーヒー。

高濃度なので、炭酸水とお菓子が付いてますが、
苦いという感じではありません。

なにかここぞというとき(展示会に行くときとか決断をしなければいけない時)に頼んでいらっしゃいましたよ。
ただお父さんのことなので、時間がかかるのでお客様が少ないときに頼んで下さっていましたね。
父と「カフェ・バッハ」と私たち家族。

現在進行形でまた一つ繋がりを持つことができました。

今はあっちでおじちゃんとコーヒー談義でもしてるのかな